◆設立のあらまし◆

矢作川は、中央アルプス南端の山岳に源を発し、三河山地、西三河平野を経て三河湾に注ぐ、本川の流路延長118km、流域面積1,830km

2、わが国では中規模の河川です。矢作川流域(利水域及び関係郡域を含む地域、面積2,216km2)には、長野県2村、岐阜県1市、愛知県11市町が含まれ、農業・工業が発展し、人口は163.6万人、68.0万世帯が生活しています(住民基本台帳2019年5月1日現在、一部4月30日)。また、近年の利水域は、知多半島の半田市方面にも拡大しています。さらに、矢作川が注ぐ三河湾は本邦有数の沿岸漁場を維持し、中でも愛知県におけるアサリ類の漁獲量は、全国1位(2015年度59%、2016年度40%、2017年度23%、2018年度28%)のシェアを占めています(農林水産省 海面漁業生産統計調査 2016年4月、2017年4月、2018年4月、2019年4月公表値)。源流の渓谷・山地と三河湾は、国定公園区域の一部でもあります。

矢作川は、高度経済成長期(1955年以降)に著しく汚濁しました。工場排水のたれ流し、都市下水の増加、丘陵や山地の乱開発、地域に無配慮の土地利用・管理は、時々の台風や集中豪雨の自然作用もあり、周囲の土砂災害、洪水被害を発生させたり、大量の泥濁水を矢作川、三河湾にもたらしました。下流の水田及び沿岸漁場は被害が続発し、影響が長期化しました。この状況は、農業・漁業(内水面・海域)の生産、水利用への影響だけでなく、防災、生活や自然環境にも問題が波及しました。1969年、農業利水団体・漁業組合が中心になって「矢作川沿岸水質保全対策協議会」(略称 矢水協)を組織し、矢作川浄化運動を積極的に展開しました。この運動は、1975年頃から、「流域は一つ、運命共同体」の意識を基に、上下流域の住民交流・事業所の排水規制・秩序ある開発を求めるという活動に発展しました。この手法が「矢作川方式」と呼ばれ、地域を越えたパートナーシップによる流域管理の先進例として、国内外から評価を受けるようになりました。当初19団体で設立した協議会は、市町村合併前52団体、現在、37団体(農業4、漁業18、県1、市町村14)が加入し、数多くの協力団体が側面から支援する体制になっています。

矢作川環境技術研究会は、矢作川流域において「矢作川方式」が優れた流域管理手法として定着した背景の中で、建設工事においては仮設防災など環境保全に配慮する施工技術が不可欠な現状であることから、その理念の普及および施工を支援する環境技術の体系化を図ることを目的として、1986年(昭和61年)に設立されました。構成は、矢作川流域内及びその周辺において建設工事等に携わり、本会の目的に賛同して入会した団体で、年度毎に役員(会長、委員、幹事)を選任して運営しています。

本研究会は、環境の変化に対応しつつ、一貫して矢水協の支援組織として、会員の知恵を結集して環境保全対策を提案・実践しています。2021年(令和3年)11月に設立35周年を迎えました。

◆活動の社会貢献◆

流域の建設工事現場や土地改変の管理地を中心に仮設防災・濁水防止の手法が普及し、汚濁水の発生予防、流出負荷の低減に寄与しています。